お子さんのお小遣い、どんなルールにしていますか?
- 欲しいと言われたときに、適切なものであれば、その都度買ってあげているので、お小遣いは必要ない。
- そんなに、お金に執着していないので、子供が友達同士で出かけるときに適額渡している。
こうしたスタイルのご家庭は、今では少なくないようです。
無駄遣いをさせたくない、浪費癖をつけたくない──
親として、そう思う気持ちはよくわかります。
けれど、こうしたスタイルと「毎月決まった額を渡す」方法とでは、 子どもの中に育つ金銭感覚やお金の価値観に、どんな違いが生まれるのでしょうか?
子育てを終えた今、さまざまな家庭の実例を振り返るなかで、
金融リテラシー(お金の教養)が育つかどうかは、お小遣いの渡し方に大きく関わっていると感じるようになりました。
この記事では、「お金を使わせない」教育が見逃してしまう学びの機会、
そして、お小遣いを通して子どもが“お金との付き合い方”をどう学べるのかについて、実例を交えて考えていきます。
お小遣い、どう渡すかより─なぜ渡すのか?
「必要なときにだけ渡す」の背景にある親心
「お小遣いは特に決めていません。必要なときにだけ渡しています」
そんなルールにしているご家庭に、理由を聞いてみました。
返ってきたのは、次のような声です。
- 無駄に使わせたくない
- 目的があるときだけで充分
- 毎月決めると、かえってお金に執着するようになりそう
- まだ“お金の管理”を任せるには早い気がする
子どもを守りたい、正しく導きたい──
その想いから、「必要なときだけ渡す」スタイルを選ぶのは、自然なことかもしれません。
でもそれが“学ぶ機会”を奪っているかもしれない
けれど、こうした「守ってあげたい」という思いが、
実は、学ぶ機会”を遠ざけているかもしれない
としたら、どうでしょうか。
- お金の使い方は、実際にお金を持ち、使ってみなければ身につかない
- 人から教わるだけでは、なかなか感覚としては定着しない
たとえば、
お小遣いを渡す目的は、単に「物を買うためのお金を与える」ことではありません。 本来は、お金を使うことで学ぶための経験の場──それが、お小遣いです。 お金を受け取り、使い、時には失敗し、後悔し、次にどうしようか考える。 こうした一連のプロセスが、「金銭感覚」を少しずつ育てていきます。
決められた金額でやり繰りすることを学ぶ
お小遣いを渡す意味は、ただ「好きなものを買うお金」ではありません。
決まった金額の中でどう使うかを自分で考えること──それ自体が、大きな学びになります。
たとえば、
・買ったけど使わなかったモノに後悔したり
・お金が足りなくなって我慢する経験をしたり
そんな体験の積み重ねが、「次はどうしよう?」と考える力を育てます。
私たち大人も、衝動買いや無駄遣いで反省することがありますよね。
子どもも同じ。失敗こそが、金銭感覚を磨くチャンスなのです。
小学生のうちなら、失敗しても小さな金額。
「どう使えばよかったか」を親子で一緒に振り返るだけでも、十分な学びになります。
中学生・高校生になると、子どもたちはどんどん親の知らない社会の中に入っていきます。
友達との付き合い、部活、スマホやゲーム、SNS…使い道も選択肢も一気に広がります。
そんなときに、自分なりの「使い方の基準」ができていなければ、
誰かにすすめられるままに使ってしまったり、場の空気に流されて、思わぬ出費につながることもあります。
だからこそ、小さいうちに「やり繰りする」「考えて使う」経験を積み重ねることが、
自分を守る力にもつながっていくのです。
【実例1】借りることに慣れる怖さ──お金と信頼の話
お金を自分で管理する経験がないまま思春期を迎えると、判断が甘くなり、思わぬトラブルに巻き込まれることがあります。
ゲームに夢中になり、スマホのゲームに課金してしまったある中学生。
足りない分を親には言い出せず、ついに友達にお金を借りてしまいました。
問題だったのは、金額の大小ではありません。
「親に言えなかったこと」、そして「友達との信頼を壊してしまったこと」──この2つこそが、子どもにとって大きな代償だったのです。
このケースで本当に怖いのは、「借りたお金は、返せばいい」という考えが当たり前になってしまうこと。
人との信頼や責任よりも、“とりあえず目先の欲を満たす”ことが優先されてしまう思考は、大人になってからも重大なトラブルにつながりかねません。
たとえば、リボ払い、ローン、サブスクの多重契約…。
お金の出入りに無頓着なまま社会に出ると、気づいたときには手遅れ──そんな事例は決して珍しくありません。
だからこそ、子どものうちに「お金には責任が伴う」という感覚を育てることが、信頼関係の築き方や自己管理の土台にもなるのです。
【実例2】「これは投資かも」─ゲームで変わったお金の使い方
ゲームセンターの「太鼓の達人」に熱中していたある中学生。
毎回数百円をつかって遊ぶことが習慣になっていましたが、ふとこんなことを考えるようになりました。
「これ、楽しいけど、やればやるほどお金が減っていくのって、なんだかもったいないな」
その後、自分で調べて「太鼓の達人のPC版」を発見。
「これなら何度でも練習できるし、お金もかからない。上達もできる。こっちのほうが断然いい」と判断し、自分のお小遣いでソフトを購入しました。。
これは、単なる節約ではありません。
「目的のある支出は、将来につながる投資になり得る」という感覚の芽生えです。
こうして、自分で考えてお金の使い方を判断する力が育ち始めました。
この経験が、自然と「浪費」「消費」「投資」の違いを体感的に学ぶきっかけになりました。
彼はその後、成人し、つみたてNISAを始めるなど、資産運用の考え方を持つ大人へと成長しました。
「任せるのが不安…」と感じたときに、親が整えたい心構え
「お小遣いは定額にして、あとは子どもに任せてみよう」
そう思っても、いざとなると「本当に大丈夫かな?」という不安が先に立ち、なかなか踏み出せないものです。
親として、お金の使い方を見守るのは、思った以上に勇気がいること。
- 渡したお金がどこへ消えるのかもわからない。
- 使い道をいちいち管理するのも違う気がする。
その狭間で揺れるとき、必要なのは「どんな姿勢でお金と向き合うか」という親自身の軸です。
子どもに何を学ばせたいのか。
どこまで任せ、どこから見守るのか。
その判断には、ちょっとした知識や、他の家庭の工夫、そして信頼できる考え方が支えになります。
私は、そんなときこそ本の力を借りることをおすすめしたいと思っています。
親自身の考え方を整理し、「任せるとはどういうことか?」を落ち着いて見つめ直す時間は、これから長く続く親子のお金の関わり方に、大きな安心をもたらしてくれます。